個人事業主では利益のすべてに所得税が課税されますが、法人化することにより役員報酬を受けることになるため利益の一部を所得税、残りに法人税が課税されます。
所得税は超累進課税ですので所得が増えれば税率が高くなります。
一方法人税はほぼ一定ですので個人事業主の所得が大きいほど法人化による節税効果は高くなります。
また、法人から給与として役員報酬を受けるため、給与所得控除が適用できます。
個人事業では、仕入れ先の未払金や金融機関などからの借入金などは個人の負債としてすべて背負うことになります。
法人化して株式会社や合同会社にした場合では、個人保証でなければ出資額を限度として債務を負うことになります。
登記されている法人は、会社の基本情報を公示しているため明確化されています。
取引先を法人に限定している企業もあり、一般的に個人事業主よりも法人のほうが信用性は高いと言えるでしょう。
また、事務所や店舗を借りるときや借入の際に保証人が求められることがあります。個人事業主であると契約者が事業主であるため第三者が保証人となります。法人では法人が契約者であるため事業主が保証人になることができます。
また、社会保険の加入の義務があるため人材採用の面でも人が集まりやすく、より優秀な人材を雇用できる可能性が高いです。
赤字経営になった場合、その損失を翌年度以降へ繰越し所得と相殺し控除することができます。
個人事業主の場合は繰越すことのできる期間は3年間ですが、法人の場合9年間(平成30年4月1日以後に開始する各事業年度において生じた欠損金額については10年間)繰越すことができます。
個人事業主であれば開業届を出すことで事業を始めることができますが、法人の設立では決めなければならないことや、様々な手続きを行わなければなりません。
また、申請の仕方や会社形態によって変わりますが、設立するためには費用もかかります。
個人事業主は赤字経営となった場合、課税する所得がないため所得税や住民税の負担はありません。
しかし、法人の場合では法人に課せられる法人住民税のうち、均等割区分に関しては赤字経営であっても支払わなければなりません。
また、赤字経営であっても役員報酬は払わなければならないため事業主の所得税や住民税は課税されます。
個人事業とは違い、法人での会計処理は複雑化され、事業主自身で行うのはかなり困難になります。
税理士や公認会計士に委託することになりますが、コストが発生することになります。
また社会保険など事務処理の手続きも多くなり、事務スタッフが必要になる場合もあります。
個人事業主では特定の場合のみ強制加入とされていましたが、法人化すると雇用する人数に関係なく強制加入となります。
社会保険では保険料が法人と個人が折半で支払います。
法人としては従業員が増えれば負担する保険料もあがるためデメリットといえますが、個人としては国民健康保険や国民年金よりも補償が手厚いためメリットと言えるでしょう。
また、従業員への負担分も経費として計上できるため、一概にデメリットとも言い切れない場合もあります。
所得税の税率が5~45%と利益が上がると税率が高くなっていきます。
所得金額 | 税率 |
195万円未満 | 5% |
195万円以上 | 10% |
330万円以上 | 20% |
695万円以上 | 23% |
900万円以上 | 33% |
1,800万円以上 | 40% |
4,000万円以上 | 45% |
これに控除額を引いた額が所得税です。
一方普通法人の法人税率は800万円以下の部分に15%、800万円を超えた部分に23.2%です。これに地方法人税が法人税額の10.3%がかかります。
所得税の税率は900万円を超えると33%となるので、個人事業主で利益が800万円~900万円になったタイミングで法人化を検討するとよいでしょう。
消費税課税事業者になる基準は2年前の課税売上高が1,000万円を超えた場合です。
これは個人事業主でも法人でも同じであり、個人と法人では人格が異なります。個人事業主で消費税の納税義務が発生する年の前年に法人化し、個人事業を廃止すれば改めて免税事業者の法人となります。
消費税の納税を免れるために法人化するというわけではありませんが、一つのタイミングとして検討してもよいでしょう。
このように法人化といってもメリットとデメリットがございますので、
自社の状況を改めて確認し、検討いただければと思います。
また、江原会計事務所では法人化するべきかお悩みの方への法人化診断サポートを実施しておりますので、
法人化に関して、お悩みの方は是非ご相談ください。
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