『倒産』とは法的に定義されている言葉ではなく、会社が資金繰りに窮して、事業を継続できない 状態を指します。
もし、取引先が倒産してしまったら、取引先から債権を回収しなければなりません。
一般的に、倒産した企業から債権を回収するのは 非常にむずかしいとされています。
倒産は、経営がうまくいかずに資金不足に陥った状態だからです。
それでも、まったく方法がないわけではありません。
場合によっては、債権の大部分を回収できることもあります。
まず、取引先が倒産したら、現状の確認を行います。
社屋を訪れるなどして、取引先がどのような状況かを確認すれば、自社商品の納品を差し止めたり、納品済の商品を引き上げたりといった対応が取れます。
一度納品した商品でも『所有権留保特約』を 付帯させておけば、売買契約を解除して引き上げることが可能です。
所有権留保特約とは、売り手が売買の代金を担保するために、代金が支払われるまでは所有権を買い手に移さず、保留する契約のことです。
ただし、所有権留保特約があっても、相手先の倉庫から勝手に商品を持ち出すと、窃盗や不法侵入の罪に問われる可能性があります。
債務者である取引先から同意を得て、立ち会いのもと引き上げるようにしましょう。
ちなみに同意を得る場合には、同意書を作成して署名をもらっておくと安心です。
また、所有 権留保特約を結んでいなくても、両社の合意があれば代金の未払いや契約の不履行を理由に売買契約を解除し、商品を引き上げることができます。
さらに、取引先が商品の引き渡しを拒否したとしても、裁判所に占有移転禁止の仮処分の申立を行ってから訴訟を経て商品を引き上げる方法もあります。
ただし、商品が第三者に転売されている場合は、所有権留保特約の有無にかかわらず商品を引き上げることはできません。
自社商品を引き上げられない場合は、合意のもと取引先の資産を債権の代わりに譲り受ける『代物弁済』という方法もあります。
資産には、取引先に納品されていた商品や、入金前の受取手形や小切手、車や不動産なども含まれます。
また、取引先が別の会社に対して保有している売掛金の債権を譲り受ける『債権譲渡』という方法もあります。
ただし、ほかの債権者から詐害行為として取消される可能性もありますので、十分注意が必要です。
さらに、取引先に対して債務がある場合には、 取引先への債権と自社の債務を同じ金額だけ相殺させることもできます。
ただし、いくつか要件があるので、実施する前に確認しておきましょう。
代物弁済や相殺のほかにも、裁判による資産の仮差押えや連帯保証人への取立などの手段を講じることができます。
しかし、取引先が『破産手続』を開始した場合には注意が必要です。
破産手続とは、 裁判所に選定された破産管財人が倒産した企業の財産を金銭に換えて、債権者に配当金を分配する法的手続の一つです。
倒産した取引先が破産手続を開始した場合、独自に債権を回収することができなくなります。
また後日、自社が行った代物弁済や相殺などの債権回収に関して、破産管財人から否認される可能性があります。
否認された場合は、せっかく回収した金銭や資産を返さなければいけません。
破産手続が開始されると、債権者は破産管財人から配当金しか受け取ることができず、債権の多くが未回収になる可能性もあります。
ケースによって対応が異なるため、取引先が倒産したら、弁護士などの専門家に相談しましょう。
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