作成日:2023年7月20日
被相続人が誰かに貸したお金は、遺産の一部として相続税の対象となります。
被相続人が代表取締役社長であり、社長が企業に資金を貸した場合も同様です。
貸付金が高額の場合、相続人の税負担が大きくなるため、事前にできる相続税対策を知っておきましょう。
中小企業では資金調達方法の一つとして、代表取締役社長などの役員が個人の資金を企業に貸すことがあります。
勘定科目では『役員借入金』に分類されますが、貸主が役員個人であるため、
利息を0円に設定したり、業績が好調なタイミングで返済したりと利息や返済時期を自由に設定できるというメリットがあります。
しかし、貸し手である役員が亡くなると貸付金が返済されていない場合、相続税の対象となります。
貸付金が高額の場合、配偶者や子どもたち相続人にとって、大きな税負担となる可能性があります。
未回収の貸付金について、相続税が免除されることはほとんどありません。
ただし、借り手である企業が倒産や破産するなど、一定の条件を満たした場合に限り、相続財産に算入しなくてよいとされています。
このような場合、相続税を軽減するためには役員の生前に対策を講じておくことが重要になります。
対策の一つに貸付金の全額、もしくは一部を放棄する『債権放棄』があります。
役員が企業に『債権放棄通知』を提出することで、貸付金が放棄され財産が減少するため、相続税を支払う必要がなくなります。
一方で企業には、その貸付金分が『債務免除益』として計上され法人税が課されます。
そのため、事業の状況や繰越欠損金と相殺できるかなどを検討し、役員が債務放棄をしたことで企業が税金を納められず倒産するといったことがないよう、放棄する額などについて綿密にすり合わせることが大切です。
さらに、債務免除を受けたことで企業の株価が上昇すると、株主が受ける利益が贈与税の課税対象となるため、その点も注意が必要です。
貸付金を贈与して財産を減らすか、DESによって評価を引き下げる
「債権放棄はしたくない」といった場合には、貸付金を相続人に贈与することが選択肢となります。
贈与税の基礎控除額年間110万円の範囲内で少しずつ贈与していけば、贈与税は課されず、相続財産も減らすことができます。
ただし相続開始前3年以内(改正により、2024年1月1日以降の贈与は相続開始前7年以内)に行われた贈与は相続税の対象となるため、早い段階から計画的に行う必要があります。
また、貸付金の贈与を受けた相続人は、貸付金を返済してもらう権利、『貸付金債権』を得ます。
この場合、相続人は貸付金の返済を求めることが可能になるため、貸付金の贈与は慎重に行いましょう。
このほかにも、貸付金を株式に換えて相続財産の評価額を引き下げる『デット・エクイティ・スワップ(DES)』があります。
相続税の計算では、貸付金は元本と相続開始日現在の既経過利息の額で評価されます。
一般的に役員借入金の利息は0円にしておくケースが多く、通常は貸付金の元本が相続税の評価額になります。
一方、株価は会社の規模等により配当額や利益額などの業績に応じて決まりますが、
役員借入金があるような企業の株価は低いため、
貸付金を企業の株式に換えることで、貸付金元本よりも評価額を引き下げることが可能です。
ただし、DESが相続税の節税以外に合理性が認められないと判断されると
『同族会社の行為または計算の否認』が適用される可能性が考えられるため、慎重な判断が必要となります。
どの対策もメリットがある一方でリスクもあります。状況によっても選ぶべき対策は異なるので、専門家に相談するようにしましょう。
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