作成日:2023年9月10日
大手飲食チェーンでの客による迷惑行為が頻発し、その動画が拡散されて大きなニュースになりました。
これらの迷惑行為を防止するのは簡単ではありませんが、経営の根幹を揺るがしかねないこの問題に、企業としてどう向き合うべきかを考察していきます。
2023 年2月、大手回転寿司チェーン『スシロー』 にて、高校生の迷惑行為が SNS で拡散されました。
醤油ボトルや湯飲みをなめたり、流れている寿司を 指でつついたりしたもので、スシローの株価は大幅に下落、損失額は 160 億円以上になりました。
スシ ローはこの事件を受けて、翌日の開店前に、全店ですべての湯飲みを洗浄、醤油ボトルの入れ替えなどを行ったほか、今後はオーダー商品のみの提供に切り替える、卓上の調味料は希望があれば交換するなどの対策を発表しました。
外食産業ではこのような迷惑行為動画の拡散が頻発しており、各社とも警察へ被害届を提出し、「厳正に対処する」と述べています。
スシローは再発防止策として、卓上の調味料を交換可能にし、席とレーンの間にアクリル板を設置すると発表しました。
スシロー以外の外食チェーンでも、寿司皿カバーの不審な開閉を察知する人工知能(AI)搭載カメラの全店舗導入や、無料提供の付け合わせを個別包装 に切り替えるなどの対策を講じています。
これらの迷惑行為は、理不尽なクレームを行うカ スタマーハラスメント(以下、カスハラ)の一種といえます。
従来カスハラは、土下座の要求や暴言、罵倒といった行為が多かったものの、近年、前述のような迷惑行為動画の拡散が増えてきました。
動画の拡散は企業のイメージダウンや風評被害、株価下落など、被害が飛躍的に拡大する点で、従来のカスハラ以上の影響力があるといえます。
そのため、企業として早急な対応が必要であり、改めて、自社の対応指針やマニュアルを見直すほか、後述する厚生労働省の指針を確認していくことが求められます。
では具体的に、迷惑行為をはじめとするカスハラに対応するには、どうすればよいのでしょうか。
まずは企業としての対応策、対応マニュアルを整備することが必要です。
最初に取り組むべきは、迷惑行為・カスハラの防止策を考えることです。
その際には他社事例が参考になります。
同業他社で起きた事件は自社にも起こり得ると考え、自社で同様の迷惑行為が発生した場合の対応策を想定しておきましょう。
二つ目は、迷惑行為ができない環境を整えることです。
たとえば、卓上に置かれた箸や爪楊枝、調味料を個包装のものに切り替えるなど、迷惑行為の原因となり得る状況を減らします。
三つ目は、抑止力を高めることです。
迷惑行為は発見次第、厳正に対処するという警告文を掲示するほか、客への声かけ を増やすなどの対応策を実施していきましょう。
こうした状況を受け、厚生労働省は2022 年2月に『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』を策定し、理不尽なクレームや迷惑行為への対応についてより踏み込んだ指針を示しました。
マニュアルには具体的な策定手順やポイントが丁寧に示されているので、参考にするとよいでしょう。
あらゆる迷惑行為・カスハラ発生のリスクをゼロにするのは容易ではありませんが、企業として一貫した対応方針を示し、防止策を実施していくことでリスクを低減していくことは可能です。迷惑行為を防ぐにはどのような対策が有効なのか、各社がどのように対応していくのか、今後も注視していきましょう。
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